静かな涙【完】
私は車の振動を身体で感じながら、ずっと二人を見つめていた…




今にも、涙がこぼれ落ちそうで…



必死に堪えた…




『アハハ…んもう…アハハ…』



お姉ちゃんの笑い声が私の耳につく…




私は…




大好きだったお姉ちゃんの事まで…



嫌いになりかかっている…



嫌いという単純なものではないかもしれない…




愛情と憎しみと妬みが…複雑に絡みあっているような…




人間って勝手な生き物だよね…




あの時のお姉ちゃんを見た時は…



お姉ちゃんの足になってあげたい




お姉ちゃんの笑顔が見たい



お姉ちゃんの代わりになってあげたい



お姉ちゃんが喜ぶ事ならなんでもする



お姉ちゃんが望むなら…
浩司さんをあげる…




あの時は、本当にそう思ったんだ…




お姉ちゃんの幸せを第一に考えて…




それが今ではこんな、ざまだ…



自分の心が悲鳴を挙げていたって…



浩司さんの手は、お姉ちゃんの手を掴むんだ。



私の手ではない…



今頃になって解るとか…




私は相当な馬鹿だ。




大馬鹿者…だよ…
私は…

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