椿山亜季人の苦難日記

非力男の我が儘(p107-

屋上は心地いい。


強い風に吹き飛ばされそうにはなるけどさ、


春の風は気持よくて、


夏は日陰のコンクリートがひんやりとして、



秋は焼けるような空に温かさを感じて、



冬は、誰も知らないだろうね。

どの季節よりも鮮明に見える、ずっと遠くの風景に想いを篤くするんだ。



ずっと独りで、ずっと静かなこの場所は、俺のお気に入り。



小学校も、中学校も、ずっと独り。



…いや、別に俺が寂しい男ってわけじゃないよ?


ずっと、煩わしいものが嫌いだっただけ。



例えば、ほら、あのうるっさい泣き虫チビすけとか、

不器用な口悪い暴力ものだとか、


おとなしすぎの薄幸少女とかね。



多分、自分から関わるのが面倒だっただけかな~。


< 107 / 169 >

この作品をシェア

pagetop