椿山亜季人の苦難日記
キャンバスの上にあったのは、赤と黄色と、青と白、屋上のフェンス越しに、向かいのビルの窓にうつる、

いろんな色の『空』。


「また・・・、カラフルな空だねぇ?」


それに、直接見ているわけじゃない、窓にうつる、虚像の空。

「それは、夕焼け?」


千歌の隣に立って、両腕に余るほどの、そのキャンバスを見つめた。


「・・・違う、全部。」

「ん?」



千歌の顔を見ると、彼女はまっすぐ、キャンバスの向こうのビルを見つめていた。

 

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