椿山亜季人の苦難日記
「朝焼けも、夕焼けも、晴天の空も、暗雲も、それから星空も、全部。」


神妙な顔をして、でも決して、こちらを見ない。



「知ってる?空は、本当は、一つの色だけじゃない。空はいつも、いろんな色を持ってる。

一つの色しか、見せられていないみたいに感じるだけ。

だから…。」


「うん、全部ね・・・。」


俺は妙に納得する。


千歌は、がさつで、不器用で、素直じゃない。


でも、絵のことになると真剣で、 

その本心は、繊細で、とても臆病。


変な生き物。




『人間も同じ、いろんな面を持ってる。同じに見えたのは、その表面しか見なかったから。』


初めて、千歌の絵を見たとき、それをよく感じたんだ。



「ん、やっぱ、千歌ちゃんの絵、好きだわ。」

それは、素直な本心。



真っ赤な顔で、千歌がデコピンをする。

「いだっ」

何でこんなに強いわけ・・・?

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