椿山亜季人の苦難日記
「くっ。」

おかしくて、片手で顔を覆った。顔は、やけに熱い。


「…口汚くて、素直じゃなくて、暴力的で、全然かわいくなくて…。」


「…ほんと、喧嘩売ってるの?」


さらに機嫌を損ねたか、千歌の声は太くなる。


かわいらしいこともいえない、でも…


「でも、そういう千歌が、必要なんだ。」


そんなかわいい子が好きなんじゃない。


「へ?」


間抜けな声がした。今、きっと面白い顔をしてるんだろう。


でも見れなかった。


顔を覆っていた手を濡らすものを、晒したくなかった。



「…アキさん、泣いてる…の?」


 

頭に触れようとした手を掴んで、顔を見られないように、

千歌の肩に顔を埋めた。



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