椿山亜季人の苦難日記
「ほら、離せ。」
無表情の冷たい視線を送られて、会長は青ざめた顔で手をはなした。
「な、なんで先生が、こんなところに?」
会長の問掛けに、先生は、ああっと、時計を指差した。
「もうホームルームが始まるってのに、資料をとりにこないアホ委員長がいてなぁ。わざわざ探しに来てやったんだ。」
そう言って、彼は皮肉たっぷりに私を見た。
やっぱり…、性格悪い。
「若いし、青春するのもいいが授業をサボるのは良くない。」
バシッと、吉原先生は私の背中を叩いた。
「言うべきことは、きちんと言え。」
不思議と、その顔をみると強くなれた気がして、促されるままに、会長に対峙した。
「会長は、会長として仲間だと思っています。だから嫌いではありません。でも、男の人として好きにはなれません。」
一呼吸置いて、頭を下げる。
「ごめんなさい。」
静かに、会長は頷いた。
「俺こそ…、ごめん。」