椿山亜季人の苦難日記
「あっ…。」

無表情の亜季人くんが、天井の冷房を見上げて声を上げた。

つられてみんなが見上げて気づいた。

「冷房…入った、ね?」

「うん。何で?」

亮介くんの疑問に、千歌が、

「あっ、アイツかも。」

「ああ。」

亜季人くんが頷く。

「さっき、この教室の前でしばらく覗いてる先生いたから。たぶんそいつが冷房入れてくれたんでしょ。誰だっけ…背の高い…」


胸が、小さく高鳴るのを感じた。


千歌の言葉を待つ。

「若いヤツ。吉田!」

「いや、吉川だろ。」

ツッコむ亜季人くん。

どっちもこの高校にはいないよ…。

「もしかして、吉原先生…?」


『そうそうっ!』


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