椿山亜季人の苦難日記
「好きなヤツにうつつをぬかして、落ちるなんてマネするな。」

わずかに皮肉の笑いが混じったのが分かった。

「え?何…」


「橋本だよ。この前、仲良く勉強してるとこ見た。」


「ち、違います!!」


立ち上がって先生の方を振り向くと、先生はやっぱり背中を向けたままだった。

「なんだ、田崎もそんなでかい声がでるんだな。」


そのままで、作業を続けている。


先生はいつもこうだ。いつも、顔が見えない。


「真面目に聞いてください!亮介くんは友達です!」

「あ、そう。そんな必死に否定しなくていいぞ、バラしたりはしないから。」

片手をヒラヒラと振って答える。


< 64 / 169 >

この作品をシェア

pagetop