椿山亜季人の苦難日記
「何の本読んでるの?」

きっと、亜季人くんは話しをしなくても良かったのだろうけれど、私は気まずくて話しかけた。

顔をあげた亜季人くんは、ちょっと笑って答えた。

「日和ちゃんみたいな話。」

「えっ?なにそれ…」


「『気配りとストレス』って本だよ。」


本を閉じて、隣の亮介くんのペンと、やりかけの課題をとった。

「あんまり気を回しすぎると疲れるから、自由にしてていいし、時々はワガママ言ってもいいって書いてたよ。」


…敵わないなぁ。きっと、そんな本じゃないだろう。私が気まずいのを考えてくれたんだ。


「さて、チビちゃんの珍解答でも見て遊びましょうか。」


「あははは、ひどいなぁ、亜季人くんは。」



訂正をしてあげながら、ボソッと亜季人くんが言った。


「あんまり危ないことはしちゃだめだよ。あいつらが心配するからね。」


「え?」

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