椿山亜季人の苦難日記
ドキッとした。

まさか、バレた?

先生とは、学校の外では不用意に会っていない。目立たないように不自然でない理由で、一緒にいる。


でも、亜季人くんなら、もしかしたら、気付いているかもしれない。


嫌な汗を、手に感じた。


「あ、亜季人くん…それ…」


『たっだいまー!』


「おおっ、お疲れさん。」

戻って来た千歌と亮介くんを、何事もなかったかのように、亜季人くんは迎えた。

「ありがとね。」

私も出来る限りの笑顔を作って、二人に向けた。


話はそれまで、とでも彼は言いたいんでしょう。知られたくないなら、深追いするのもヤボなことだ。


たとえ知られていても、彼なら誰にも言わないだろう。


そう思って、もう忘れることにした。



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