椿山亜季人の苦難日記
「ふぁー、疲れたぁ!」
亮介くんが伸びをして、机に突っ伏した。
「だいぶ進んだね。」
「えっへへ~。でも、アキさんの落書きがなかったら、もっと進んだのにさ!」
すねた顔で、横の亜季人くんを見る。
「アホみたいな間違いばっかしなけりゃ、二度手間にならないのにな。」
亜季人くんからしれっと言われて、亮介くんは言い返せないでいた。
「あーっ、蚊にさされた!」
と、イライラしながら千歌がベランダから入ってきた。夕方になって、虫が出てきたらしい。
「そろそろ帰りますかねぇ。今日遊んでいく!?」
ノリノリの亮介くんが、亜季人くんにくっつくと、亜季人くんは嫌そうな顔をして、
「今夜は手巻き寿司だから帰る。」と。
「ええっ!何それ!」
「日和、帰ろうぜぇ。」
「千歌、早っ!」
二人のやりとりを完全に無視していた千歌は、早々に画材を片づけ、帰り支度を済ませていた。