椿山亜季人の苦難日記
『じゃあ、また明日!』
正門から、方向の同じ私と千歌は右へ、寄り道していく亮介くんはまっすぐ、手巻き寿司が待つ家へ真っ直ぐ帰る亜季人くんは左へと分かれた。
夏の夕方は明るくて、それでも昼間よりは幾分か涼しくなった風は、汗ばんだ腕を心地よく霞めた。
学校を出るとき、職員室の電気がついていた。きっと今日も遅くまで仕事しているんだろうな。
『お疲れさん。23時ぐらいに電話する。』
さっき、先生からメールが届いていた。絵文字も無駄な言葉もない質素なメール。
寂しいとは思わない。むしろ先生らしくて、ただ愛しくなるんだ。
23時には声が聞ける…
顔が緩む…。こうだから、亜季人くんにばれてしまったのかな。
「なんか機嫌いいね、日和。」
「えっ。」
あわてて隣を見ると、私と視線をあわせるように少しかがんで、千歌が笑っていた。
正門から、方向の同じ私と千歌は右へ、寄り道していく亮介くんはまっすぐ、手巻き寿司が待つ家へ真っ直ぐ帰る亜季人くんは左へと分かれた。
夏の夕方は明るくて、それでも昼間よりは幾分か涼しくなった風は、汗ばんだ腕を心地よく霞めた。
学校を出るとき、職員室の電気がついていた。きっと今日も遅くまで仕事しているんだろうな。
『お疲れさん。23時ぐらいに電話する。』
さっき、先生からメールが届いていた。絵文字も無駄な言葉もない質素なメール。
寂しいとは思わない。むしろ先生らしくて、ただ愛しくなるんだ。
23時には声が聞ける…
顔が緩む…。こうだから、亜季人くんにばれてしまったのかな。
「なんか機嫌いいね、日和。」
「えっ。」
あわてて隣を見ると、私と視線をあわせるように少しかがんで、千歌が笑っていた。