椿山亜季人の苦難日記
2人を追って、階段を上っていると、途中で声が聞こえたから、なんとなく気がひけて、立ち止まった。


千歌の声が、泣いているように聞こえたからだ。



「…アキさん。」


「ん?」


「…日和は…、苦しかったかな?」


少し弱くて、ふるえるような千歌の声。


「信頼とか…、私と、吉原と…。私の一言が重かったかもしれない。私が正直になれば、きっと、それだけ…。」



「違うんじゃない?」


「例えば、苦しかったとしても、それは、日和ちゃんが千歌ちゃんを大切に思うからだろ。」


「日和ちゃんの支えにもなったはずだよ。」


そのまま、2人の声は途切れた。

一階下の階段に座り込んで聴いていたから、2人の表情は分からないけど、

けど、きっと優しい顔をしているだろう。


日和ちゃん、一人で苦しんでいるのかな?

君を想っているヤツらはここにもいるから、

だから、絶望なんてしないでよ?ねぇ…。

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