椿山亜季人の苦難日記
「吉原君は、伝えるつもりはないと言ったわ。口止はされなかったけど…、私は、言わない方がいいと思ったから言わなかった。」


「そんなの…」

そんなのずるい。


そう思うのは、俺が子供だからだろうか…。


「でも」

ふと、先生が口に出す。

「橋本が、田崎に伝えるかどうかは、あなたの自由だと思うわ。」


諭すように、俺の肘を軽く揺すって、柔らかく笑った先生は、再び仕事に戻る。

ほどなく予鈴が鳴って、職員室を出た。




俺は… 言うべきか?


言ったら、日和ちゃんはどうなるんだろう。

やっぱり追い掛けるだろうか?

言わなかったら、このまま終わって、次に行けるかも…、


俺にだって、チャンスが…







俺って、嫌なヤツ……。


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