椿山亜季人の苦難日記
日和ちゃんは、体の前で組んだ手をギュッと握る。
「…連絡もとれなくなって…、私、あの人の人生をめちゃくちゃにしちゃったから…きっと怒ってるのね。」
おどけたような声だけど、髪で隠れて、表情は見えない。
「私が悪いのっ。私が勝手に先生のこと好きになって…先生は私の気持ち酌んでくれただけで…
私が悪い…」
突然、立ち上がった千歌が、グイッと日和ちゃんの肩をつかんで顔を上げさせた。
「千歌っ…」
千歌は、本気で怒っている。
「悪いと思うくらいなら好きになるな!!
あんたが男だったら殴り倒してる!!」
「千歌っ!」
言いすぎだ、と千歌に言おうと思ったら、目も合わさずに怒鳴り返された。
「うっさい!」
扉を荒々しく開けて、千歌は出ていった。