君がいた夏
……もう何度も、それこそ嫌になるくらい繰り返された会話。
機械的にそう返事を返せるようになったのはいつからだろう。
何も感じない。だって、もう“忘れた”ことだから。
──私は今どんな表情をしているのだろう。
「……もう良いよ私の話なんて。それよりさ、さっきの映画すごく良かったよね!」
知らず知らずに重くなっていった雰囲気を誤魔化すために、わざと明るく声を出して話題を変える。
「……そうだね!クライマックスなんて心臓止まるかと思っちゃった!」
そんな私の心境を知ってか知らずか、同じく空気を変えるように明るく返事をする麻奈。
……ああ、気を遣わせてしまったな。
チクリと突き刺さる、罪悪感。
それから逃れるように、笑顔で会話を続ける私。
……先ほどまで溜め息ばかりついてた私がいきなり話し出す様を、彼女はどう思っているのだろう?
* * *
「……あっ、ごめん!もう時間だ!」
話は流れ、彼女の所属するバレーボール部の話が盛り上がっていた頃、突然麻奈が腕時計を見てそう言った。
「ああ……塾だっけ?」
「そうなの!ごめん、もう出なきゃ」
慌てて荷物をまとめ席をたつ麻奈に続き、私も立ち上がる。