君がいた夏
* * *
麻奈の波乱を巻き起こした電話の翌日。
私はいつもより少しびくびくしながら図書館へ向かった。
いや、特に理由はないんだけど……どうも意識してしまうと言うか、ね?
午前中は、課題を開いてても心ここにあらずで、全く進まなかった。
そして、いつも陽平が来る時間が近付くと、私の緊張はピークに。
そわそわキョロキョロしながら、いてもたってもいられなくて、顔でも洗いに行こうかと席をたったとき……
「葉月ー、よお、来たぜ」
…………来たー!!!!!!
全身を強張らせながら恐る恐る振り向くと、そこにはいつもの明るい笑顔を張り付けた陽平の姿……。
「ん?どうした?」
なんて、様子のおかしい私を覗きこんで来たりするから。
ドッ、ドドド、ドキドキするっ……!
うるさいくらいに鳴り響く心臓の音と、全身から吹き出す汗を感じて、私は陽平から顔を背ける。
「な、なな、なんでもない……」
そう言ってから何事もなかったように座っていた席につくと、陽平も当たり前の様に私の隣の椅子をひく。
……いやいや、昨日までもこれが普通だったんだけどね!?
……どうしよう……。
多分私のほっぺ、今真っ赤。
それを自覚しつつ、隣で教科書やらを取り出している陽平の顔をちらりと見ていると……。
「…………!!!!!」
不意にこちらを向いた陽平が、なんだか不思議な表情で笑う。
「葉月?どうした?……今日なんか変だけど?俺、顔になんかついてる?」