君がいた夏
あの、ね?陽平!
頼むから、さっきからそうやって当たり前の様に私の顔を覗きこむのやめてもらえますか……!!
「……別に、どうもしない」
震えないように気を付けながら、なんとか声を押し出す私。
……ああー、なんて可愛いげのない態度なんだろう!
『他の子にとられちゃうかもよ?』
昨晩の電話での、麻奈の言葉が響く。
わかってるけど……、いきなり態度を変える事なんて出来ないし、もうこれで良いんだ。
「ほんとに?」
それでも、なおも引き下がろうとしない陽平に、なんかもう自分がわからなくなってしまって、
「本当だってば!」
……思わず、大きな声が出てしまった。
ここ、図書館なのに。
すぐさま周りから向けられる、迷惑そうな刺すような視線に二人して縮こまる。
『馬鹿、葉月』
ばつが悪そうに合わさった視線が、そんな言葉を語っていた。
『ごめん……』
私も同じく、視線でそう告げる。