君がいた夏
「……はあ」
また、溜息を零している自分に気がつく。
麻奈と別れて一人になった瞬間、言いようのない虚脱感に襲われた。
……ううん、本当は、今日ずっと感じていて、でも気付かないようにしていただけの虚脱感。
ふと気がついて、辺りを見渡してみた。
ここらへんはショッピングモールとかがあるだけあって……なんか、手をつないだ男女が多く目につく。
「……はぁ」
また、溜め息がこぼれた。
もう、今日何回目だろう。
近くのショーウインドウに、浮かない顔をしたぱっとしない少女が映りこんでいる。
おしゃれな格好をした人たちがいるなか、私一人だけ、何もかもがそぐわない。その様子がひどく滑稽に感じて。
止まっていた足を、自宅に向かって踏み出す。
はやく帰ろう……。
こんな人混みの中、しかもこの、夏のにおいに満たされた景色のなか。
……思い出して、しまうから。