君がいた夏
静かな空間にそう響いた、自分の声で目が覚めた。
「陽平……?」
ままだしゃっきりしない頭のまま、もう一度名前を呼ぶ。
すごく陽平の声が近くから聞こえた気がして……今なら呼べば答えそうな気がしたんだ。
「………………」
……でも、やっぱり返事はなくて。
私はようやく、はっきりとした意識の中で、今の状況を悟った。
あのあと……ごろごろしてて、そのまま眠ってしまったんだ。
窓の外も真っ暗だし、時計は午前2時をさしていた。
(お母さん、起こしてくれれば良かったのに……)
確かにもう夕飯は食べていたけれど。
まだお風呂も入ってないし、歯も磨いていない。
私は音をたてないようにそっと部屋を出て、お風呂場へと向かった。