君がいた夏




静かな空間にそう響いた、自分の声で目が覚めた。




「陽平……?」




ままだしゃっきりしない頭のまま、もう一度名前を呼ぶ。





すごく陽平の声が近くから聞こえた気がして……今なら呼べば答えそうな気がしたんだ。





「………………」







……でも、やっぱり返事はなくて。





私はようやく、はっきりとした意識の中で、今の状況を悟った。





あのあと……ごろごろしてて、そのまま眠ってしまったんだ。





窓の外も真っ暗だし、時計は午前2時をさしていた。





(お母さん、起こしてくれれば良かったのに……)




確かにもう夕飯は食べていたけれど。






まだお風呂も入ってないし、歯も磨いていない。




私は音をたてないようにそっと部屋を出て、お風呂場へと向かった。



< 53 / 78 >

この作品をシェア

pagetop