サクラが咲いた、雨
もしも、本当に彼女が加地くんを好きだったなら。
……私は卑怯な真似をした。
私は正々堂々と、彼女と戦うことを拒否したのだから。
「もう、それを言おうか言わないかで迷ってたの?」
「…そ、そう…」
「早く言ってよ!」
「…ごめん」
だって、失いたくなかったの。
『瑞華ちゃん』と。
あの笑顔で言ってくれるあなたを。
「私、ちょっとお手洗い行ってくるね」
「あ、うん」
「部誌、続き書いてくれてたら嬉しいな」
「わかった」
ガチャッ、と。
梓紗が出ていく。
打ち明けたら、心が少し晴れた。
楽になった。
先ほどよりは大分空気が軽くなった。
でもどうしてだろう。
やっぱり、
「…最低だわ、私は…」
恋のためなら、私は、友情をも捨てることができる女なんだから。
最低。
その一言に尽きると思う。