サクラが咲いた、雨
「…っ瑞華ちゃん!」
私に抱きつく梓紗。
梓紗だけじゃない。
私にとっても、梓紗は最高の友達だって思うよ。
こんなにも同じ趣味を持って、友達って言うよりも、最高のパートナーに出会えることは、なかなかないことだって私は思う。
そんなパートナーに出会えたことは、私の最高の財産だ。
「加地くんを譲りたくないって思ってた私の方がもっと最低だよ」
「好きなら、抱【いだ】いて当然だよ。その気持ちは。それだけ加地くんのことが好きだっていうことなんだから」
そう言ってくれる彼女の寛大な器と柔軟な心は、本当に尊敬すべきだと思う。
私なら、そうとは思えない。
多分、『最低』って思うと思うから。
その彼女の言葉に救われたような気がした。
それと同時に、クラスの女の子たちが言っていたあの言葉を思い出す。
―――『梓紗と同じ人が好きになった暁には、本当に大変だろうね』と。
本当にその通りだと思う。
こんなに素敵な女の子なんだから。
きっと、――私には敵わない。
“好きな人がもし『梓紗が好きだから』って振られても、仕方ないなって諦められるぐらい、素敵な子”と。
彼女たちが言っていたのも、本当にその通りだと思う。
絶対私は、梓紗には敵う日は到底来ないと思う。