サクラが咲いた、雨
サクラが咲いた
「…大丈夫だよ、心配しなくたって。私が加地くんと話してたのは瑞華ちゃんの話だから」
「え…」
「瑞華ちゃんのことを聞かれていたの」
その話の内容をすべて聞いた。
『なあ、浅海?』
『うん?どうしたの、加地くん』
『杉原ってさ…』
『…瑞華ちゃん?』
『……好きな奴、いるって聞いたことある?』
『……加地くんって、瑞華ちゃん好きなの?』
『……恥ずかしいから、言わないでくれるかな』
ああ、私は。
最高に今、幸せだ。
加地くんに、そんな風に聞かれていただなんて。
「毎朝大変だったんだからね?『杉原ってどうなの』って、洗い浚【ざら】い聞かれて。練習時間削られてたんだから」
『慰謝料は瑞華ちゃんに払ってもらうからね』と笑って言う彼女。
その笑顔は曇りのない、晴れ晴れとした笑顔だった。