サクラが咲いた、雨
「行っておいでよ」
「え?」
「加地くんのところに」
『もうサッカー部終わってるはずだから』と。
そう言う梓紗の顔は、意地悪そうな、面白そうな顔をしていた。
「ええっ?!」
「何よお。早く想いを伝えないと!」
「そんな、早すぎ…」
「もう!小心者なんだから。待ってて!」
「えっ、ちょっ、梓紗?!」
一体、何をするつもりなんだろう。
まだ告白するつもりなんてなかったのに、彼女はせっせと席を立ち、外へと走っていく。
その後ろ姿を見るしかできない私は、第三者から見ると、呆然と立ち尽くしているおかしな人に見えるのだろうな。
サッカー部の団体の方に向かって走る彼女を見つめていると、加地くんが彼女を見る。
それさえも、少し嫌な感情が芽生える。
彼女が加地くんのことを好きじゃないってわかったはずなのに、どうしてもやきもちを妬いてしまう。
私は見ぬようにと、部室の中に入る。