サクラが咲いた、雨
好きなのに、どうして
同じクラスの私たちは、教室までの道のりを歩く。
テニスのことについて話したり、部活のメニューのことについて話したり。
そうじゃなければ、他愛もない話をして朝連跡の教室までの道を2人で歩く。
教室に入れば、私と梓紗に向けて、あいさつの声が響き渡る。
席は廊下側と窓際と、離れているため梓紗は窓際の方へ歩く。
私は廊下側の一番後ろの自分の席まで歩く。
すると、
「杉原、おはよう」
と。
愛しい声が鼓膜を擽【くすぐ】る。
「加地【かじ】くん…!」
内心はすごく嬉しくて堪らない。
だって、1年の頃から好きだから。
彼のことは、一目惚れだった。
でも、言えずにいた。
特に、2年で同じクラスになるまでは話したこともなかったから。
それが、同じクラスになって、少しずつ話すようになって。
とても嬉しく感じている。
…いや、嬉しくて堪らないの。
些細なことでも、話しかけてくれることが。