サクラが咲いた、雨






「おはよう。加地くんも朝練?」

「うん、そう。杉原もだろ?」





けれど、決して表には出さない。

彼も、同じだから。
私に対して抱いているイメージが。





「えっ、そうだけど…何で?」

「今朝も校門前で浅海と会ったから。毎日1人でサーブ練習してるよ」

「えっ、サッカー部ってすごく早いよね?」

「6時半ぐらいには俺は来てるけど」

「梓紗ったらあんな朝早く来てるの?!」





びっくりした。
素直に。

だって、いつも部室前の監督の椅子に座って、何食わない顔で、いつも『おっはよー!』って涼しそうな顔をしてる。


けど、いつも首にタオルを巻いていた。

それは、一年の頃から変わらず。


もしかしたら、それを監督や先輩たちは知っていたのかもしれない。

だからこそ、梓紗は可愛がられたのかもしれない。



…こう言うことなんだなって、私は思った。

どうしてこんな可愛らしい子が、強豪校のエースだったのか。
それは、こうした影の努力から。

どうして後輩がやるべき仕事を彼女がするのか。
それは、そういった基本中の基本のことをこなしてからやるべきだという彼女の信念から。

きっと、そういったことの積み重ねが、彼女を強くしたのだろう。






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