サクラが咲いた、雨






「ねえ、瑞華ちゃん」

「…!梓紗…」




梓紗はいつも後輩がやるべき仕事を率先してやっている。

だからこそ、先輩たちや後輩からすごく慕われるのだろうと思う。


『すごいなあ』と私自身も思っている一人だ。

それが、あんなに朝早く毎日来ていただなんて。
それに対してもびっくりで。


なぜか、つい数分の間で、彼女がすごく大きい人のように見えた。



私の知らない梓紗。
私の知らない加地くん。

お互いが知っている、お互いを。

―――私だけが知らない。





「あのね、昨日の部活日誌渡すの忘れちゃってた。ごめんね?」





そうだ。
彼女は部誌も書いてくれている。

…なら、私は何をしていたのだろう。

実質、彼女が部長のようなものじゃない。





< 8 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop