サクラが咲いた、雨
「ねえ、瑞華ちゃん」
「…!梓紗…」
梓紗はいつも後輩がやるべき仕事を率先してやっている。
だからこそ、先輩たちや後輩からすごく慕われるのだろうと思う。
『すごいなあ』と私自身も思っている一人だ。
それが、あんなに朝早く毎日来ていただなんて。
それに対してもびっくりで。
なぜか、つい数分の間で、彼女がすごく大きい人のように見えた。
私の知らない梓紗。
私の知らない加地くん。
お互いが知っている、お互いを。
―――私だけが知らない。
「あのね、昨日の部活日誌渡すの忘れちゃってた。ごめんね?」
そうだ。
彼女は部誌も書いてくれている。
…なら、私は何をしていたのだろう。
実質、彼女が部長のようなものじゃない。