サクラが咲いた、雨
「…瑞華ちゃん?」
「…あ、うん…。いいよ、またあとで渡してくれたら」
「わかった、ありがとう。ごめんね!」
申し訳なさそうな顔をする、梓紗。
本当に彼女は可愛いと思う。
何をするにしても、女の子らしい素振りで。
部活中とは全く違う顔を持ってる。
鋭く観察する彼女の眼と、誰にでもフレンドリーに接する彼女の目。
『じゃあ、私戻るね』と言って席に戻ろうとする梓紗が、彼の方を向いた。
「あ、そうだ。加地くん、今朝はありがとう」
にっこりと私と同じように微笑んで、彼女は加地くんにそう言う。
…変わらないのに、変わらないはずなのに。
なぜだろう。
彼女に対して、嫌な気持ちが芽生える。
―――加地君に話しかけないで。
そんな感情が。
そんな気持ちが、芽生える。
それを私自身も感じていた。