星月童話
星月童話


 ゆるゆると流れている水をぼんやりと眺めていた。ゆるり、ゆるり、ゆるり、と蛇口から流れる水は当たり前だけど透明で、美しいとさえ思った。

「……で、どうかな?」

 その声に、はっと我に返った。そうだ、話の途中だった。でも、蛇口から流れる水がどうしても気になった。

 止めなくていいのかな。

「ああ、あれはいいの。実験中だから」

 清川さんはちらりと蛇口を見やるとそう言った。

 何の実験だろう。わたしにはわかるはずもない。

「君はすぐに集中が途切れるね。まあ、途切れさせた原因はあれだけどね」

「すみません……」

 わたしは深く頭を下げた。

「それも君のいいところだよ。じゃあ、話の続き。君には実験に協力してもらいたいんだ」

 清川さんはそう言うとにっこりと笑った。顔にかかった長い髪が同時に揺れる。

 邪魔じゃないのかな。

 どうでもいいのかな、この感情は。それとも、必要なのかな。だって、他人のことだし。あれ、でも今は関係ないかな。

「珠理ちゃん?」

 また清川さんに声をかけられて我に返った。


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