星月童話
わたしは再び頭を深く下げた。
「すみません。関係のないことを考えていました。……多分」
「いいよいいよ。大事なことだよ。よし、じゃあ、これから話をします。いい? 話をするんだ。わかるかな?」
清川さんは椅子から立ち上がると私の前に来た。そして、長身を屈めるとわたしと目線を合わせた。
「はい。わかります」
「よし、イイコだ」
清川さんは微笑むとわたしの頭にぽんと手を乗せた。こうすれば、わたしの集中は清川さんに向けられる。
「これから、ある人と会ってもらいます。その人と一ヶ月間、一緒に暮らしてください。そして、毎日報告書を提出してください」
清川さんはゆっくりとした口調でわたしの目を見ながら説明をした。
「報告書、ですか?」
「そう。でも難しく考えないで。規定のものがあるから、珠理ちゃんはそれに書き込むだけでいい。できるかな?」
わたしはゆっくりと頷いた。それならできそう。
「イイコだ。じゃあ、部屋に案内するよ」
清川さんはにっこりと笑うと、わたしの手を取って椅子から立ち上がらせた。