送り狼

気が付くと…


暗闇の中に居た…。


真っ暗で何も見えない。


四方を闇に囲まれ、自分がどの方向を向いているのかすら解らない…。


『…やだ…怖い…』


暗闇の恐怖が私を襲う。


『怖いよっ!誰か助けてっ!!』



「…ひふみ


 よいむなや…

 
 こともちろらね…」



ーー歌だーー


「…しきる

 
 ゆゐつわぬ…

 
 そをたはくめか…」


この歌は…『ひふみ祝詞』…。


「…うおえ

 
 にさりへて…


 のますえほれけ…」


優しい声…

この声はおばあちゃん…??


私は声のする方へと無意識に歩き出す。


おばあちゃんの『ひふみ祝詞』は

私を導くように、繰り返し歌われる…。


『真央こっちよ…』


そう言われているようだった。


声の聞こえる先に光が差す…。


私は光めがけて走り出す。





『真央…こっち…』











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