送り狼
辺りの空気が急激に氷ついて行くのを身体で感じる。
私は、男の質問に答える事は出来ない。
何故なら、全く身に覚えのない話だからだ…。
「……そうはさせんっ…!!」
沈黙を破るように、男はそう叫ぶと、
私を力任せに抱き寄せる。
突拍子もないこの行動に、呆気にとられていると
男の長い指が私の頬に触れた。
そして、そのまま乱暴に顎を掴まれ
引き寄せられた。
男の端正な顔が目の前にある……
私は何が起きているのかまだ理解できなくて、彼のなすがままになっている。
ーー気付くと……
口の中を生温かい物が這いずり回っていた。
「………っっうっ…んっ…!?」
驚いて我に返る。
抵抗しようと身をよじるが、力強い腕にしっかり押さえつけられて身動きが取れない。
渾身の力を込めて男の胸を、ドンドンっと殴ったーー。
すると私の両腕は、すぐに男の片手に戒められ、
乱暴に高く上げられた。
中の粘膜を全部持っていかれそうだ!
「……っっんくうっ…!!」
…息ができないっ!!
ーー気が遠くなりそうだーー!