送り狼

『この世界は…

 何度生まれ変わろうと、僕を受け入れてはくれない…

 受け入れようともしてくれない…』


眼下に広がる寂れた集落…。

この閉鎖的で小さな世界こそが、鳴人、そして栞の全てだ。


努力すれば報われる…、そんな言葉は、今の鳴人にとって、傷を持たない人間の戯言にしか思えない。


『…世界が僕を受け入れないというのなら……

 …僕が…壊してやる…。

 こんな事がまかり通り、繰り返されるのがこの世界の理ならば…

 こんな世界など、いらないっ!!
  
 僕が…、僕がこの手で壊してやるっ!!』



湿気を含んだ真夏の重い空気は、いつの間にか轟くような分厚い雨雲を呼んでいた。

重く暗い雨雲は、鬱陶しい程に輝く太陽を遮り、この一帯に暗い影を落とした。


間もなく、この寂れた村に嵐が訪れるだろう…。



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