送り狼
慟哭
あれからどうやって帰って来たのか…
気付くと私はおばあちゃんの家の玄関前に立っていた。
茫然自失な私は無意識にふらふらとここまで辿り着いたようだ。
「ガラガラ」
古い引き戸の、戸を開く音が「しん」とした家に響き渡る。
私はそのままふらふらと寝室まで行くと、敷きっ放しの布団に雪崩れこんだ。
頬に布団の優しい肌触りを感じると、急に涙が込み上げてきた。
真っ白なシーツを握りしめて嗚咽を上げる。
正直こうなる予想はあった…
それなのに、それを回避出来なかった自分に腹が立つ。
夏代子の想いを上手く伝える事が出来なかった自分に腹が立つ…。
何より…
必死だったとは言え、
あの状況で自分の想いを彼に告げるのは…
卑怯だと思った。
後から冷静になって考えてみると、彼は突然真実を知らされ動揺していたのだ。
無理もない…。
長い間、その真実に目を背け続けてきたのだから…。
彼には…時間が必要だったのだ。
真実を受け入れる為の…。
それなのに…
私は、彼を失いたくなくて、ただ、その一心で
自分勝手な想いを彼にぶつけた…。
銀狼の残した、あの瞳が頭から離れない…。
傷付いた目をしていた。
悲しい目をしていた。
困惑の色をしていた…。
全部私のせいだ…。
私は銀狼を傷付けたのだ…。
彼を傷付ける為に、真実を知ろうとしたわけじゃないのに…。
後悔だけが、後から後から押し寄せてくる…。
『…銀狼は…もう私の前に現れないかもしれない…』
消えてしまいたい衝動を抑えきれない私は、せめて布団にくるまってこの身を現実世界から隠す他、自分を守る術がなかった…。
そうした所で状況は変わらないのだが…
とてもじゃないが、そうせずには居れなかった。