送り狼
ーーーーーーー………………………。
「………………」
…………見覚えのある天井だ……。
そう、ここは、おばあちゃんの家。
まだ、金切り音の影響が残っているのか、なんだか胃が気持ち悪い。
仰向けに転がったまま、「自分である事」を確認する為に、掌を天井にかざして、グー、パーしてみる。
ーーー私だ………。
どうやら、無事に帰って来れたようだ。
それにしても、酷い気分だ。
どれぐらいの時間がたったのだろう…。
目だけで室内を見回したが、先程までと、なんら変わりはないようだ。
あれから、余り時間は経過していない様子……。
気だるい身体をゆっくり起こした。
頭がまだボンヤリしていて、今まで起きた事の前後をゆっくり繋げていく。
「カチャン」
ガラスのぶつかる音がした…。
手元には、あの写真たてが落ちている。
ーーーそうだった……。これを見ていて、倒れたんだ…。
「………………」
あの不思議な体験で2つだけ解った事がある……。
一つは、銀狼が言っていた事は恐らく、真実だ、という事だ。
あの、リアルすぎる程に痛い感情は、
私の胸の中のどこかにまだ残っていて、
古傷を突つくかのように、チクチクと私を苦しめている。
二つ目は……………。
ーーーー確証はないんだけど…………。
私は、手元の写真たてをジッと見つめた。
倒れた時の衝撃か、写真たてはズレてしまっていて中身の写真が半分くらいはみ出てしまっている…。
おばあちゃんの大切にしていたであろう写真だ。
元に戻そうと、写真に手を伸ばした……
ーーーその時ーーー
ーーーーーーーーー。
私は一瞬だけ目を見開いた…。
だが、それは、すでに予想していた事だ。
古ぼけた白黒の写真の裏には、消えそうな文字で、
″夏代子、銀狼、夏祭り〝
と書かれてあった……。
ーーーーーーー確証だーーーー………。