送り狼



銀狼の身体を取り巻いていた蒼い光は、


強く激しく発光し、やがて蒼い光の柱となった。


そして、徐々にその光は、彼の体内に吸い込まれ


暫くすると、辺りは、また元の静けさを取り戻していた。






「……これで、俺とお前の契約は完了した……」



宙に舞う銀狼は、満足気に目を細め、私を見下ろしていた……。




「………お…のれぇ…、犬神めっ!人柱と契をかわしおったなっ!?」



銀狼の呪縛が溶けたのか、化物が恨めしげにうめき声を上げた。





「かくなる上は、人柱ごと丸呑みにしてくれるっ!!」



化物は狂ったような、雄叫びを上げ、私に飛び掛かって来た!!





気がつけば、化け物は私のすぐ目の前にある。


この化物の機敏な動きに、私の身体はついて行けず、固まっていた。


生臭い大きな口の中には、鋭い牙が隙間なくビッシリと並んでおり、



それは今まさに、私を丸呑みにしようと、鈍く光を放つ……!





ーーその刹那、私は銀狼に向かって渾身の力を込めて叫んだーー






「……黙って見てないで……私を助けなさいよっ!!」





彼は、扇子で口元を隠して笑っていた……。





「…やれやれ……。口の聞き方を知らぬ、お姫様だ…」





ーーー飲まれる!!ーーー





そう、思って瞳を固く閉じた。






……………………

……………………。



受ける筈の衝撃が、ない……。


私は食われていない……??




化物の酷い唸り声が、耳をつく。




恐る恐る目を開くと、


視界には、 大きくて広い背中と


長い銀髪が、風に乗ってゆらゆら揺れている光景が映り込んだ。









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