送り狼
心臓はおおよそありえない状況に爆発寸前で
ドクドクとかなり早いペースで脈打っている!
驚きなんてものを通り越した私の頭は思考停止状態。
前にふざけて自分でつくった鼻歌だけが、頭の中をグールグル無意味に回っている。
「なんで今その歌っ!?」
と、鋭く自分に突っ込みを入れた所でようやく我にかえった。
我にかえった所でこの状況を脱したわけではないのだが……。
両目いっぱいに広がったと思われた光は、よくよく見てみると拳大ほどの光の玉だった。
その光の玉が私の鼻先で、
「ふよふよ」
と浮いていたのだ。
「……………!?!?」(絶句)
こんな物を見てしまったら誰だって
心臓も高鳴れば、無意味な鼻歌も頭をグルグル駆け巡る事だろうっ!!
しかし、この状況で一人突っ込みしている私は、
ある意味、肝がすわっているのかもしれない……
少し、壊れ気味な私に光の玉が語りかける。
『……真央……。こっち……』
ーーやっぱり聞き覚えのある声だ…。
光の玉は私の鼻先をゆ~らゆらと揺れると
そのまま窓際へ滑るように移動して、網戸越しの庭へ通り抜けた。
それを、さらにほうけた顔で眺めている私……。
『……真央……。こっち……。』
これは……ついて来いって事だよね??
「……………」
「ええーいっ!!もうっ、どうにでもなれっ!!」
恐怖心は拭えなかった。
でも、この懐かしい声の正体をはっきりさせたいと思った私は、
光の玉に導かれるままついて行こうと決めた。
いや、ついて行かなきゃいけないって事を
頭の何処かで解っていたような気がする。