送り狼

光の玉は時折、

私がついてきているのを確認するかのように止まってはまた進む…。


おばあちゃんの家から続く一本道を

今日私が来た道を辿るようにして下って行く……。


今夜は月が綺麗に顔を出していて、真夜中であるのに灯りは必要ない程だ。


月明かりが、草木に反射して暗闇に慣れた私の目に、蒼白い世界を映し出す。

同じ風景でも昼間とはまた違うように見えるこの景色が、

まるでここは別世界なんだと言っているようだ。



光の玉が、私との距離を縮めるかのようにまた止まった…。




止まったのは犬神様の社の前……


そして、ゆらゆらと大きく円を描いて

そのまま社の方へ静かに消えて行った……。


犬神様の社は高い木々に被われていて、月の光が届かない。

ここから先は、真っ暗な闇だけが広がっている。



その暗さに、冷や汗が流れ落ちる…。


…でも、私は何故だかとても気になるんだ。

光の玉も

謎の声も

犬神様の社も……。



私はなけなしの勇気を振り絞り闇の中へ足を踏み込んだ。
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