空の下の約束
遠くで雷の音が聞こえてくる。


急がなきゃ。


そう思い歩みを早めるが、下り坂は歩きにくい。


息も上がってくるしこれ以上早くは歩けない。


雨に濡れるのを覚悟してユックリ歩くことに決めたとき、バックの中から滅多に鳴ることのない携帯の呼び出し音が聞こえてきた。


慌てて探し電話にでる。


「ハア…も、もしもし?…ハア」


「美空ちゃん!!どうしたの?具合が悪いの?今どこ?迎えに行くから!!」


えっ?!星野先生?


「ハア…あの、先生?…ハア」


「早く場所言って!!」


「あの、そんなに慌てなくても…クスクス…ちょっと今歩いててそれで息切れしてたの。クスクス」


「えっ?!そうなの?でも今どこ?雨が降りそうだよ。迎えにいくから」


迎えって言っても…


「大丈夫ですよ。それに私、今は涼みが丘にいるんですよ…」


「そんなところに?あっ、でもそこまでは20分ぐらいで行けるから駅で待ってて?雨に濡れないようにね!」


そう言って一方的に電話を切ってしまった。


「先生って結構せっかち?」


笑みが漏れたがここでユックリしてる暇はなかった。


真上の雲は既に黒くなり、いつ雨が降り出してもおかしくなかった。


「急がないと先生きちゃう」


今の自分の精一杯の早さで歩きだした。
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