謎の時間
いつもの帰り道を、ふたりで歩く。
「ふぅーん、あのせんせやっぱり喋るのゆっくりなんだ〜」
自分のことを棚上げして歴史教師のことを言うそいつは、ある意味つわものなのだろう。以前そのことを指摘したらあはは〜、と笑われた。
「ったく、つー訳で今日の授業もあまり進んでないぜ?」
「進んでてもキミは寝てるもんねぇ」
軽くはたき、先に行くぞ、とぶっきらぼうに言う。そいつは特に慌てる風もなく、ゆっくりと後を付いてくる。
「ふふふ、……怒ったの〜?」
楽しそうに言うそいつはほんとにのんきだと思う。
「だめだよ、怒ったら」
ふと、そいつの口調が変わった気がした。俺は振り返るとそいつを見た。
「何さー、カラスが豆食べたみたいな顔〜」
そいつはなんの悪意もなく笑うと、抜かした〜、と先を行った。