どこからどこまで
 白い。

 次に意識が浮上したときに思ったことは、それだった。あと、肌寒い。

 どうやら朝らしい。なんとなく光でわかる。


「んんー…」


 伸びをしながら思い出す。目覚めた場所が車内である理由。目的地は海だ。

 隣を見る。運転席には誰もいない。後ろを見る。後部座席にも誰もいない。

 翔ちゃんも薫も、どこ行ったんだろう…。

 ひとりぼっちだ。

 寝てしまったことへの後悔と同じくらい、不安が押し寄せてきた。

 しかし、それでも欠伸はでる。自分の神経の図太さに、ひとり苦笑した。

 口をおさえながら、お腹の辺りでクシャクシャになっていたタオルケットに気づいた。

 翔ちゃんがかけてくれたんだろうなあ…。

 寝ているうちにお腹まで下がっていってしまったんだろう。

 水色に白のドット柄なタオルケットを肩まて引き上げる。肌寒かったのが少しだけ暖かくなった。

 そういえば、ここ、どこ…?

 暖かくなって少し安心したところで、あたしは初めて窓の外を見た。

 周りに数台、車が見える。地面は砂利がしかれているようだが、ところどころに雑草が生えている。

 駐車場………かな?

 だとすれば着いたのだろうか。

 携帯を確認したが連絡はない。

 車内を見まわしたところ、ドアには全てロックがかかっていた。

 車も鍵閉めて出てったみたいだし、戻ってくるまで待ってよ…。

 あ、でも一応"起きた"って電話しようかな。

 携帯を再び手に取り、着信履歴から翔ちゃんの番号に発信する。

 が、その必要はなかったようだ。

 車の鍵が開く音がした。

 発信中止。外を見れば翔ちゃんがいた。

 ドアが開く。更に寒い空気が車内へとやってきた。


「起きた?おはよ」

「はよ…。ごめんね、結局あたし寝ちゃって……」

「大丈夫だよ、全然。もったいないから早く外おいで」

「"もったいない"?」


 下げたあたしの頭をポンポンと撫でたあと、翔ちゃんは車のトランクを開けて何やら探し始めた。


「朝日、もうでてる」

「わっ、ほんと!?」

「さな、上着って持ってきてたっけ?」

「あ…持ってきてない……」

「外けっこう寒いから、これ着て。俺のだけど」

「わ、ごめん。ありがとう!」
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