Don't forget “my memory…”

目の前にいるのは、いつも自分の側にいる、カリン…

側にいて、微笑んで、俺の心を癒してくれる彼女…


そんな彼女がすぐ側にいる…

なのに今、そこにいる彼女は、いつもと違う…


何かを企むような笑いに鋭く光る、緑色の瞳…



あの、緑色の瞳は…



悪の、者…



冷や汗が、顎まで流れて行く…
ごくっと生唾を呑む…


2年前のあの出来事が、頭の中に蘇る…


苦しむ彼女の姿が…

涙を流す彼女の姿が…

何かに怯える彼女の姿が…

鮮明に、頭の中に描かれた…



消えたはずなのに…

彼女の体から、消えたはずなのに…

どうして
どうして…



放心状態のルイを目にして、カリンは笑う…

いつものカリンからは考えられない笑い方で…


 「ハハハッ……何て様だよ。不様な姿…ノワールに力を授かったとは思えないね。」


ヘラヘラと笑う彼女を見ても、彼女が汚い言葉で何と言おうと、ルイはその場から動けずにいた…

石のようにその場に立ち尽くし、何かに足を縛られたかのように…



そんなシュウを見ても、彼女はお構いなしに笑い続ける…



だが、そんな彼女は、突然顔から笑顔を消した…


緑色の瞳を細め、鋭くルイを睨む…


 「あんたの疑問、答えてあげようか?」

微かに口の端を歪め、意地悪そうに彼女は言った…



その言葉に、ピクッと体を震わせ顔を上げる…

自分の考えている事が、見透かされているように感じ、どこか寒気を覚えたからだ…


 「2年前に消えたはずのあたしが、何故ここにいるのか、不思議でたまんないんだろ?
だからその疑問、答えたげるって言ってんの。」



何か企んででもいるのだろうか…

何かしようとしているのだろうか…

自分から素性を明かすなんて…


全てが疑問で…

頭の中が疑問だらけで、酷く頭痛がする…

ジンジンと脈を打って、体中に痛みを走らせる…



聞きたくない訳じゃない…

でも、聞いてはいけない気がする…

そう心は叫んでいるのに、どうする事もできなかった…

その場に立ち尽くし、真実を聞く事しか…

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