Don't forget “my memory…”
ルイの反応を見て、彼女は短く笑うと、話し始めた…
自らの真実を…
「ンフッ……あたしはねぇ、消えたりなんかしないのさ。この2年間、この女の中から消えた訳じゃない。あたしは眠らされてたのさ。こいつの心の奥深くにね。」
眠らされていた…
消えたと思っていた悪の血は、今まで彼女の心の奥深くで、息を潜めていたという事なのか…
暗闇に身を潜め、この時を狙っていたという事なのか…
「あたしを殺したいんだろ?この女の中から消したいんだろ?
だったら殺しなよ。殺せばいい。この女ごと。」
「!」
見開かれた青い瞳…
その瞳は、信じられないというように、微かに、否、確かに震えていた…
絶望を目の前にしたかのように、様々に変わる彼の表情を見る度、彼女は何が可笑しいのか、笑い続ける…
「アハハッ…あたしはね、この女の感情と同じなのさ。喜びや、悲しみ、苦しみや幸せ、全ての感情の中の1つ。
だから、あたしを消すって事は、この女を殺すって事。」
鋭く伸ばした爪を、自らの首元に持って行き、スッと皮膚を引っ掻く…
すると、その傷から真っ赤な血液が滲み出ていた…
それを目にすると、彼女が、目の前にいる彼女が、人間だという事を確信付ける…
悪の血など受け継いでいない、普通の人間だと…
悪の血を消すには、カリンを殺すしかない…
目の前の人物は、カリンの中の感情の1つ…
消すには…
彼の頭の中には、血に染まり、涙を流しながらこちらを見つめる彼女の姿が映し出された…
そんな姿を頭の中から振り払うかのように頭を振る…
無理だ…
殺すなんて…
カリンを傷つけるなんて…
一番傷つけたくない彼女を、自らが手を下すなんて…
そんな事、できない…
護るって決めたのに…
もう傷つけないって決めたのに…
なのに…
グッと拳を握り、力強く瞼を閉じた…
現実から逃げるように…
目の前で嫌味に笑う、彼女から逃げるように…