Don't forget “my memory…”

自分の胸へと迫り来る剣先…

避けられないと察知すると、彼女は覚悟したのか顔を伏せた…



そんな彼女の胸まであと少しとなった所で、彼女は顔を上げ、ルイを見つめる…




 『…止めて……ルイ………』


その声は震えていて…

ルイを見つめる彼女の綺麗な瞳には涙が浮かぶ…



そんな今の彼女は、紛れもなく、本物の、カリン…




何の迷いもなく剣を突き出すルイの力が、その言葉で弱まった…


潤んだ瞳で見つめられ、彼は目を疑いながら、驚いた表情を見せる…




ギリギリの所で止まった剣先…

それをチラリと盗み見して確認すると、彼女はニッと嫌味に笑い、その剣を細い足で蹴り上げる…



体力が抜けていたルイは、剣から伝わった振動に手を離してしまい、剣は宙へと舞い上がった…




目の前で嫌味に笑う彼女と、手から離れ、舞い上がった剣…


ハッとして剣へと手を伸ばすが、もう既に遅く、その剣は彼女の手が掴んでいた…




高々とジャンプし、ルイより先に剣を掴んだ彼女は、彼を通り越して地に着地…


剣先を彼へと向け、わざとらしく笑う…



 「終わりだね。」


可愛らしく首を傾げる彼女…

綺麗な髪がサラリと揺れ、誰しもが見とれてしまう…



そんな彼女を見つめる彼は息を呑み、壁に張り付く…



ルイと彼女の立場が変わってしまった…

< 21 / 29 >

この作品をシェア

pagetop