Don't forget “my memory…”

息を呑み、壁に背をつけるルイ…

そんな彼に、笑顔で剣を突きつける彼女…



 「さよな………っ…あぁ…ああぁ……!」


笑顔を消し、剣を持ち上げた時だった…

彼女は苦しむように唸り、頭を押さえて前かがみになる…



苦しむ彼女を不思議そうに見ていると…




 『もう止めて!』


どこからか聴こえた、よく知るその声…

目を見開きながら、顔を伏せる彼女を見つめる…



すると再びあの声が…



 『私はこんな事望んでない!私は………』


 「黙れ!」



必死に叫ぶその声は、頭を押さえる彼女の声で遮られ、聴こえなくなってしまった…




 「勝手に出て来やがって……お前はあたしのやってる事をただ見てればいいんだよ!」



不思議な声に話し掛けるように叫ぶ彼女は、頭に添えていた手を下ろし、剣の柄を握った…


剣先を彼へと向けると、伏せていた顔を上げ、鋭く光る緑色の瞳で睨む…




 「それに、お前の望みを叶えようとしてるんだ……

こいつを殺して、あんたの側にいさせてあげる。死んで動かなくなったら、ずぅっと一緒にいられるだろ……?」


最後に笑った彼女…


その笑顔はどこか冷たく、恐怖を覚える…



彼女の笑顔に身震いしながら、彼は逃げようと試みるが、体が動かない…



こんな時になって、深手の傷が効いてくる…





 「これで、本当の終わりだよ………」


傷から伝わる鋭い痛みに顔を歪める彼を見て、彼女はそう呟くと、彼の心臓狙って引いた剣を突き出した…



身動きのとれなくなった彼は、彼女が繰り出す攻撃を、ただ見つめる事しかできずにいた…




 「死ねぇーー!」


物凄いスピードで彼の心臓を捕らえようとする剣…



 『止めてーー!』


どこからか聴こえた不思議な声の叫びでは、その剣を止める事はできない…



立ち尽くした彼は、何かを信じるように瞳を閉じる…





      グサッ……


彼女の緑色の瞳が、真っ白な頬が、飛び散った血で、真っ赤に染まる…

< 22 / 29 >

この作品をシェア

pagetop