Don't forget “my memory…”
胸を真っ赤に染めたルイの体が、壁を伝って地に倒れて行く…
ドクドクと血は溢れ、伝って行った壁には、血の線が姿を表した…
瞳を閉じたまま、仰向けに地に倒れた彼…
微かに開いた唇は、息をしているのかもわからない…
彼の前に立ち尽くす彼女の頬には、一粒の雫が流れ、だらんと下ろした手の中から、血に染まった剣を滑り落とす…
ペタンと崩れ落ちるように地に座り込む彼女…
そんな彼女の唇はワナワナと震え、見開かれた瞳には、涙が今にも零れそうな程に溜まっていた…
涙で潤むその瞳は澄んだ綺麗な色をしていて…
今ここにいる彼女は、悪の色に染まらない、本物の、カリン…
「ルイ……」
彼女は震える声で彼の名を呼ぶと、何の反応もない彼に近寄り、止めどなく流れる血を止めようと小さな掌で傷を塞ぐ…
だが、そこから流れる血は止まる事なく流れ続ける…
「…ルイ……嫌だよ………嫌だよ……死なないで………」
何度も彼の名を呼ぶ彼女の瞳からは、耐えかねた雫がポロポロと零れ落ちて行く…
どうすればいいのか…
どうしたらいいのか…
頭が混乱し、何も考えられなくなった彼女は、ただ傷口に手を添える事しかできずにいた…
すると突然、震える彼女の手首を、何かが掴む…
突然の事に、ビクッと体を震わせ、その何かに目を向ける…
涙で霞む視界だが、彼女ははっきりとわかった…
それが何なのか…
「……ルイ………?」
目を見開いて彼の顔へと目をやると…
「………カリ……ン………」
彼はうっすらと目を開け、彼女を見上げていた…
霞んだ声で名を呼ばれ、彼女の瞳からは一粒の涙が零れ落ちる…