Don't forget “my memory…”

胸を真っ赤に染めたルイの体が、壁を伝って地に倒れて行く…

ドクドクと血は溢れ、伝って行った壁には、血の線が姿を表した…



瞳を閉じたまま、仰向けに地に倒れた彼…

微かに開いた唇は、息をしているのかもわからない…




彼の前に立ち尽くす彼女の頬には、一粒の雫が流れ、だらんと下ろした手の中から、血に染まった剣を滑り落とす…



ペタンと崩れ落ちるように地に座り込む彼女…


そんな彼女の唇はワナワナと震え、見開かれた瞳には、涙が今にも零れそうな程に溜まっていた…


涙で潤むその瞳は澄んだ綺麗な色をしていて…


今ここにいる彼女は、悪の色に染まらない、本物の、カリン…





 「ルイ……」


彼女は震える声で彼の名を呼ぶと、何の反応もない彼に近寄り、止めどなく流れる血を止めようと小さな掌で傷を塞ぐ…



だが、そこから流れる血は止まる事なく流れ続ける…




 「…ルイ……嫌だよ………嫌だよ……死なないで………」


何度も彼の名を呼ぶ彼女の瞳からは、耐えかねた雫がポロポロと零れ落ちて行く…




どうすればいいのか…

どうしたらいいのか…

頭が混乱し、何も考えられなくなった彼女は、ただ傷口に手を添える事しかできずにいた…






すると突然、震える彼女の手首を、何かが掴む…



突然の事に、ビクッと体を震わせ、その何かに目を向ける…


涙で霞む視界だが、彼女ははっきりとわかった…

それが何なのか…





 「……ルイ………?」


目を見開いて彼の顔へと目をやると…




 「………カリ……ン………」


彼はうっすらと目を開け、彼女を見上げていた…

霞んだ声で名を呼ばれ、彼女の瞳からは一粒の涙が零れ落ちる…

< 23 / 29 >

この作品をシェア

pagetop