湊くんの秘密。



下山さんだってイケボって言われてるし、

湊くんが言ってたバカな同期さんもイケボですよ、と言ってあげたくなった。


「イケボねぇ…。俺たちはそんな風には思ってないんだよね、きっと。先輩たちだって多分そうだよ」



薄暗くなってきた空を仰ぎ見ながら、湊くんは言った。



「それが生まれつきの自分の声だし。今更自分の声が特別だなんて、だれも思ってないよ」

「んー…そういうものなんだ…」

「俺は蘭ちゃんの声、好きだよ」



………っ

ぶわっと顔が熱くなった。



自分の声を褒められたことは素直に嬉しいけど。

なにより、好きって言った声が…。



胸をえぐられるような声だった。

…ずるい。


あたしは湊くんの声ひとつでこんなにドキドキしてるのに。



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