湊くんの秘密。
「…あれ。蘭ちゃんこんなとこで何してるの」
階段から知っている声が聞こえて、階段下を出ると、
階段を登ろうとしている湊くんがいた。
あたしがいるって、何でわかったんだろう。
「えっ、何で。幻…?湊くん?本物?なんで…」
「ちょ、何で泣きそうな顔してるの」
ナイスタイミングすぎて、目に涙が溜まってきた。
何で会いたいと思ったら湊くんの声がするわけ…っ?
お仕事だから、絶対今は会えないって思ってたのに、急に現れるなんて…。
階段を降りて、階段下にやってきた湊くんはあたしの頭にポンと手を置いた。
「ぎゅー……してもい?」
あたしがそう聞くと、湊くんは肩にかけていたカバンを下ろして、にっこり笑った。
「許可なんていらない。…おいで」
優しく後頭部を引き寄せられて、すっぽり湊くんの腕の中に収まる。
湊くんに会えた嬉しさと、なんだかよくわかんないけどホッとして。
抱きしめられた瞬間に涙が出た。