湊くんの秘密。
VOICE : 09
会えない
【湊 side】
やたら先輩たちの間で騒がれた俺と彼女の噂もだいぶ薄くなってきた頃。
慶太さんにある台本を渡された。
「アメリカの有名な映画の吹き替えだ。この主役のオーディションがある」
「えっ、やりたいです!」
俺のパッと明るくなった表情を見て、慶太さんは逆に真剣な顔つきになった。
…?
「この映画は『CROWN』の吹き替えとは全然違う。 あんな気持ちで挑むと受かるもんも受からないからな。
最近やっと名前が知れ渡るくらいになった新人が、簡単に勝ち取れる役じゃない」
よく通る威厳のある声で言われて、ビクッと体が震える。
「やる気があるなら、本気でやれ」
「わかりました」
「できればオーディションを受けるまで蘭さんとは会うな」
え。