湊くんの秘密。
「俺、どうしてもやりたい映画の吹き替えあるんだ」
《…うん》
「オーディションで、新人声優の俺が簡単に勝ち取れる役じゃないんだ」
そう言った慶太さんの顔。
完全に今のままの俺じゃだめだって言ってる顔だった。
もっと役のことについて深く考えて、元の映画を何回も見たり、
台本が破れるくらい読み込んだりしなきゃいけない。
その映画に原作があるなら、それも読まなきゃいけないと思う。
きっとその時間が俺には必要。
「オーディションが終わるまで、蘭とは会えない」
《……そっ、か》
「学校は行けたら行く。でも」
《わかったよ。あたしも湊くんの役、見たいもん》